ケリー

1930年代、エルメスが発表したあるハンドバッグが、後に時代を象徴する存在となります。

それが、のちにケリーと呼ばれるバッグの原型です。

当初は「サック・ア・クロア(クロア留めのバッグ)」という名で、乗馬用の鞍入れをヒントにデザインされた、構築的で端正なフォルムが特徴でした。

運命が変わったのは1956年。

モナコ公妃となったグレース・ケリーが、このバッグで妊娠中のお腹をさりげなく隠す姿が『LIFE』誌に掲載され、一躍話題に。

人々はそのバッグを“ケリーのバッグ”と呼び始め、ついに1977年、正式に《ケリー》という名が与えられました。

その名を冠して以降、ケリーは「優雅さ」と「威厳」を兼ね備えた象徴となり、フォーマルから日常まで、さまざまな場面でエレガンスを演出します。

職人の手により一つひとつ作られるこのバッグは、エルメスが守り続ける伝統と、女性の内なる強さと美しさを物語るアイコンです。